ケネディ 大統領「大統領と報道機関」演説(「秘密結社」演説)

 

日本語字幕をONにしてご視聴ください。

*大幅に平易化・意訳しています。

動画用の日本語字幕原稿になります。↓

 

”ありがとう チェアマン。皆さん こんにちは。お招きいただき 有難うございます。

報道機関の責務は重大です。数年前、私はある記事を読んだのですが、それは皆さん報道機関が、今日の出来事に関して重大な責務がある、と言うものでした。

1851年 NYトリビューン新聞社において、責任者のホレス・グリーリーは、ロンドン特派員にある男を採用しました。カール・マルクスです。家族が病気になり貧困にあえぐマルクスは、グリーリーとダナ編集長に嘆願しました。”給与を5ドルだけ上げてほしい”と。エンゲルスは言いました、”5ドルは卑劣なブルジョワジーがくすねた” と。マルクスの願いは届きませんでした。彼は新たな仕事と名声を求め、トリビューン社を去りました。それから彼は 全てを社会主義に捧げたのです。”レーニン主義”、”スターリン主義”、”革命”、そして ”冷戦”です。もし ”資本主義”的な新聞社が…(聴衆の笑い)…もっと親切にしていたら、もしマルクスが特派員のままだったなら、歴史は違っていたかもしれません。ですから…(聴衆の拍手)…ですから この話を心に留めて欲しいのです。こんど同じような給与アップの嘆願が、名もない新聞記者からあった時には。(聴衆の笑い)

今晩のテーマは「大統領と報道機関」についてです。こうおっしゃる方がいるでしょう、「大統領 ”対” 報道機関」だと。しかしそう捉えるべきではありません。確かに他国の外交官が、国務省のプロパガンダによって同僚が被害を受けていると非難しています。しかしわが政府は報道内容に何ら責任を負うものではありません。また、報道機関も政府に対して何ら責任を負うものではありません。(聴衆の笑い)

今夜 お話しするのは、偏向報道を批判したいからではありません。ここ数カ月、政治的偏見のあるニュースに不満があるのは共和党議員だけです。今夜お話しするのは、大統領会見を良くしたいからでもありません。2千万ものアメリカ人がこの報道を知るのは良いことです。私という人物が、鋭く、知的で、礼節をわきまえているのだと、ワシントン特派員が教えてくれるのですから(笑いと拍手) 

またさらに、大統領と家族のプライバシー侵害について、調査を要望することなど致しません。もし、ホワイトハウス担当のマスコミの皆さんが、慎ましくも礼拝に通われているなら、(笑い)危害を加えるハズがないでしょうから。(笑いと拍手)一方で、マスコミの皆さんは、かつてほど大統領のゴルフを撮影できなくなったと不満を述べています。確かに、アイゼンハワー大統領は撮影を許可していました。しかし、彼は知らなかったのです。シークレット・サービスにボールをぶつけた気持ちを。

今夜のトピックは、皆さんにとって、とても重要なものです。それは危機に対する責任です。ピッグス湾の出来事は共通の課題が何かを示しています。あらゆる形態の脅威が、水平線の向こうから迫っています。どんな希望を抱こうとも、脅威を減らすのか、脅威とともに生きるのか、何れにせよ、その重力から、生命と安全を脅かす力から逃れる術はありません。我々への試みは、これまでとは違うやり方で迫っているのです。

この試みは、私たちの社会に、報道機関と大統領に対して、2つの要求をしています。その2つは真逆のことに思えます。しかし、国家の危機を救うには、どちらも必要なことなのです。1つは情報公開の必要性について、1つは国家機密の重要性についてです。

 

 Ⅰ

”秘密”とは 何と嫌な言葉でしょう。私たちはみな古来より、”秘密結社”、”秘密の誓い”、”秘密の儀式”を拒んできました。大昔から悪事を隠蔽することは、悪事を正当化するより危険な行為でした。今日でさえ、結社の脅威に対抗することに注意が必要なのです。今日でさえ、国家の存続は伝統が失われると保証できないのです。危機が迫っています。国家機密の必要性が、情報公開を重んじるがために軽視されてしまうという危機です。わが政府は そのようなことを許しません。だからと言って政府職員が、文民・軍人に関わらず、新聞を検閲したり、陳情を無視したり、ミスを隠したり、報道機関と市民に事実を話さないなど許されません・

しかし 私はお願いしたい。(拍手)この国の報道機関に携わるすべての人は、常識を見直し危機の正体を知って頂きたい。戦時中、政府と報道機関は自己規律に基づき、慣習的に協力しあい、敵国への情報提供を阻止しました。”明確な現在の危機”の時代、司法でさえ、憲法修正第1条の権利より、安全保障を重んじました。

今日、開戦は宣言されていません。どんな戦いもこれまでのように宣言されません。生活は攻撃されています。敵となるものは世界中を闊歩しています。友人に危機が迫っています。開戦は宣言されず、国境を征く軍隊もいません。ミサイルも飛びません。もし皆さんが、これまで通りのやり方で開戦の知らせを待っているなら、過去に例のない脅威をもたらす戦争になるでしょう。”明確な現在の危機”を待っているなら、危機が明るみになることも、正体を知ることもないでしょう。

見方を変えましょう。戦略・戦術の変更を。政府も国民も、労働者も経営者も、新聞記者も、です。巨大で冷酷な陰謀と戦いましょう。それは水面下で広がっているのです。侵略せず潜入し、選挙は転覆され、自由な選択は脅迫に代わり、正規軍はなく テロがおこなわれています。この陰謀は、莫大な人員と資源を使って高性能なマシーンを作り、軍事・外交・諜報・経済・科学・政治活動を組み込むのです。計画は隠蔽され、ミスが発覚することはありません。反対の声はかき消され、費用は問題視されず、噂されることもなく、秘密のままです。冷戦というものは、民主主義が通用するものではないのです。

しかし、民主主義は国防上の施策を抑制しています。問題は、陰謀に立ち向かう際に、その抑制は必要なのか、と言うことです。事実、この国の敵たちは、新聞から情報を得たと公然と言い、あるいは人を雇って、盗み・贈賄・スパイをおこなうのです。隠密作戦に対処するための軍事機密が、新聞の読者とその友人に知れ渡っています。作戦計画や兵力の規模・強さ・場所・性質が、報道機関によって特定されて、外部勢力はさぞ嬉しいでしょう。あるケースでは衛星追尾の機密事項がニュースになってしまい、後始末に相当な時間と予算を投じました。これを報道した新聞社は まっとうな新聞社です。戦時であれば こんな記事は掲載しなかったでしょう。今はちがうのです。ジャーナリズムだけ追及し、安全保障を軽視しないでください。

皆さんにお尋ねしたい。新たな試練に立ち向かう気があるのか、と。皆さんがお答えください。政府が答えるのではありません。政府は皆さんの意見を抑制いたしません。しかし、このままではいけません。このままでは、私は国家の責務を果たせないでしょう。皆さんの 問題意識と思慮深さが必要なのです。 

多くの機会に、私も皆さんも言ってきました。国民に犠牲と規律を求める時があると。個人の権利と生活が、全体の利益に反していないか考えてください。報道に携わる皆さんもこのことから逃れられるとは思いません。情報統制する事務局を設立する意図はありません。新たな検閲や機密項目を提案するつもりはありません。このジレンマは簡単に解決できません。私は強制しません。ただ、お願いしたいのです。報道に携わる人はその責務を再評価し、危機の実体を把握して報道の自制という義務に留意していただきたい、と。

記事を見直してください。”これはニュースなのか?”、と。言いたいのは、”国防上の利益になるのか?”、です。あらゆるレベルの組合員・ビジネスマン・公務員も、マスコミの皆さんと同じように責務を再検討して頂きたい。もし皆さんが、自らすすんで新たな報道機構を望むなら政府は真摯に協力することをお約束します。

そうは望まれないかもしれません。ジレンマの答えはないかもしれません。冷戦と水面下の戦争にさらされた社会にとっては。平時において、この問題に関するどんな議論も運動も、困難で前例のないものです。現代とは、歴史上先例のない平和と危機の時代なのです。


 Ⅱ

歴史上初めてという点によって、二つ目の責務が生じます。皆さんと分かち合う責務です。アメリカ国民に周知・警告する という責務です。情報が十分に与えられているか、また、よく理解されているのか、危機と展望、計画の意図と対処法とを。 

大統領は、公による監視に怯えなどしません。それによって理解が得られるのですから。そして賛成と反対が生まれます。どちらも必要なのです。政府の支持をお願いしているのではありません。助けてほしいのです。アメリカ国民に周知・警告する手助けをして下さい。皆さんを信頼しています。(拍手) 

周知・警告によって国民の負託に応えられるでしょう。論争を抑えることはできませんし、むしろ歓迎します。政府は間違いを認めます。賢者は言いました、”ミスを否定したとき、それはミスになる”。政府は過失に責任を負います。皆さんが過失を指摘してください。

議論なく、批判なくして、政権は維持できませんし、共和国は存続できません。アテネのソロンは、市民が論争に尻込みするのは罪とみなしました。だからこそ報道の自由は担保されるのです。憲法によって保障された仕事なのです。単に人々を楽しませるのではなく、些事を取り上げるのでもなく、見出しだけ立派でもなく、迫りくる危機を知らせて警鐘を鳴らし、破滅か存続かを示し、世論を導き、教育し、時には怒りを買うべきです。 

国際問題の取材の範囲は大きくなります。もはや遠く海の向こうではなく、すぐ近くの出来事なのです。ニュースに対する理解は、通信技術と同様に向上すべきです。政府は いかなる時も、充分な情報提供を行う責務があります。但し、安全保障に該当しない限りにおいて、です。



17世紀初頭に、F・ベーコンは三つの発明について記しました。世界を変えた羅針盤、火薬、印刷機です。羅針盤はすべての国家をつなぎ、私たちを世界市民にしました。一人の希望と恐怖は、全員の希望と恐怖になりました。共存のための世界の努力は、火薬の究極的な進化によって、悲惨な結末を迎えるかもしれません。

ですから印刷機というのは、人類の行為の記録、良心の守護者、メッセンジャーなのです。そう言える強さ・自負が必要です。報道の助けがあれば、人類は達成できるでしょう…、

自由と独立を…。”

J・F・ケネディ米大統領 April 27, 1961

JFKライブラリ

 

 

 参考記事

発達系 ~ケネディ大統領の演説から~

「我は”死”、世界を破壊する者なり」原爆の父 ロバート・オッペンハイマーの懺悔

ドワイド D. アイゼンハワー 大統領 退任演説 全文

 

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